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飛び込み玉井陸斗、世界水泳で日本勢初の銀メダルの価値とパリ五輪へ膨らむ期待

2022 7/8 06:00田村崇仁
銀メダルに輝いた玉井陸斗,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

中国勢の一角を崩し、パリ五輪金メダルの夢

2年後のパリ五輪で夢に描く金メダルが現実のものになるかもしれない。

7月3日、ブダペストで行われた水泳の世界選手権最終日。男子高飛び込み決勝で兵庫・須磨学園高1年の15歳、玉井陸斗(JSS宝塚)が488.00点で日本勢初となる銀メダルの快挙を達成した。日本勢の最年少で表彰台に立ち、最強を誇る中国勢の一角を崩して2位に入った価値はとてつもなく大きい。

自身のインスタでは「今回『メダル獲得』という大きな目標を達成することが出来ました。しかし、自分1人だけで達成したのではなく、コーチやチームのみんながいてこそのメダル獲得だと思います」と謙虚にコメントしたが、演技ではその成長と勝負強さが光った。

予選は3位通過。決勝2本目を終えて12人中8位だったが、圧巻だった3回目は最も難易率が高い前宙返り4回半抱え型(109C)で高く飛び出すと、しぶきをほとんど上げない「ノースプラッシュ」で自己最高の99.90点をたたき出して1位に浮上。高さ、回転力、最後の入水まで完璧に決まった。

混戦の中、4位で迎えた6回目は後ろ宙返り2回転半2回転半ひねりえび型(5255B)で再び90点台の95.40の高得点をマークし、逆転で表彰台に立った。

14歳で経験した東京五輪は7位入賞

兵庫県宝塚市生まれ。3歳からJSS宝塚で水泳教室に通い、小学1年で飛び込みを始めた。12歳だった2019年に日本室内選手権で史上最年少優勝を果たし、言わずと知れた飛び込み界のホープだ。中学3年で代表入りした東京五輪は14歳で経験し、高飛び込みで7位入賞の成績を残している。

160センチ、55キロの鍛え上げたシックスパックの腹筋でその技術は「天才的」とも評され、世界選手権は今大会が初出場。試合を重ねるたびに精神面のたくましさを増している。

東京五輪後はインスタで「今の自分的には十分頑張った結果なので悔いはないですが、ここで満足せずこれからさらに、いい成績を出せるようにもっと強くなりたいと思います」とさらなる飛躍を期していた。それから1年後に早くも世界の舞台で結果を出した形だ。

世界選手権で予選、準決勝、決勝と合計得点が上がっていく圧巻の演技を見せたことは、改めて勝負強さと潜在能力の高さを見せつけた。

板飛び込みとの「二刀流」も奏功

中継局やスポーツ各紙の報道によると、今春から高校生になり、目標として掲げた板飛び込みとの「二刀流」に取り組んだことも奏功した。練習拠点に高飛び込みの試合で使う10メートルの台がなく、新型コロナウイルス禍で合宿を組めなかった時期は、板からの反発を得るための強い踏み込みが必要な板飛び込みに集中的に取り組んだという。

板飛び込みは、弾力性のない台を使う高飛び込みと違って板のたわみ方が変化する中で安定した踏み切りを行う必要がある。これが結果的に筋力強化にもつながり、高飛び込みでもジャンプの高さや回転のスピードが向上する相乗効果となった。

憧れは寺内健、今夏はインターハイにも出場

飛び込みで日本勢が最初に五輪に挑んだのは1920年アントワープ大会。当時から100年以上の歳月が経過したが、これまで五輪のメダルは1度もない。高校3年で出場を目指すパリ五輪へ向け、玉井は「金メダル目指して頑張りたい」と意気込んだ。

五輪出場6度で41歳のベテラン寺内健とは、小学生時代から練習をともにする間柄。昔から競技者として憧れの存在でもある。

今後は8月の日本選手権、インターハイにも出場する予定。今大会のご褒美はユニバーサル・スタジオ・ジャパンで「ジェットコースターに乗りたい」と帰国会見のテレビインタビューで高校生らしい一面も見せていたが、残り2年でどんな進化を見せてくれるのか。日本の飛び込み界にとっても悲願の五輪メダルへ玉井は突き進む。

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