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池江璃花子、東京五輪の顔へ「自己ベスト」積み重ねて奇跡の復活

2021 4/9 06:00田村崇仁
池江璃花子Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

白血病から2年、日本選手権優勝で東京五輪切符

白血病と診断されてから2年余り。長期療養していた競泳女子の池江璃花子(20)=ルネサンス=が奇跡的な復活を遂げ、東京五輪代表に決まった。

4月4日の日本選手権で女子100メートルバタフライ決勝を57秒77で制し、個人種目での派遣標準記録(57秒10)は破れなかったが、400メートルメドレーリレーの選考基準(57秒92)を満たした。

4月8日には女子100メートル自由形決勝でも53秒98で優勝し、個人種目の派遣標準記録(53秒31)こそ届かなかったが、400メートルリレーの派遣標準記録(54秒42)を突破して2種目目の代表に決まった。

4月10日には50メートル自由形を24秒84、50メートルバタフライも25秒56で制し、病気判明前の2018年以来となる大会4冠を達成した。

不屈の精神で病魔に打ち勝ち、2020年8月のレース復帰から日本選手権が6大会目。東京・淑徳巣鴨高1年で出場した2016年リオデジャネイロ五輪に続く、2大会連続出場の扉を自らの力でこじ開けた。

体重15キロ減から「第二の水泳人生」

池江は2024年パリ五輪を目標に掲げ、再起への道を歩み始めたばかりだった。

一時は15キロ減少した体重を取り戻すため、栄養管理と筋力トレーニングで日々の鍛練を重ねてきたが、本人も周囲も驚く成長曲線で泳ぐたびにタイムが向上。病気前のタイムに及ばなくても、復帰後は「第二の水泳人生」と位置付け、タイムが伸びるたびに「自己ベスト」と呼んで、過去の残像を振り払ってきた。

池江璃花子復帰後の100mバタフライ


池江が得意とするバタフライは他の種目より体への負担が大きいとされる。2021年2月の東京都オープンで病気から復帰後初めて100メートルバタフライに出場し、予選を1分0秒06の全体2位で通過。決勝は59秒44の3位と健闘し、日本選手権参加標準記録を突破した。

そして迎えた日本選手権では予選を58秒68の全体2位で通過し、準決勝では58秒48をマークし、全体3位で決勝へ進出。決勝はさらに0秒71も縮めて57秒77を出し、泳ぐたびに課題を一つずつ克服して記録を更新した。

筋力落ちても失速しない推進力と技術

長いリーチを生かした推進力と天性の勝負勘。筋力や体力が病気前より落ちても、勝負どころの終盤で失速しないのは泳ぎの効率性を追求し、水とけんかしないテクニックのたまものでもある。

レース後に「努力は必ず報われるんだと思った」と涙声で語った言葉が全てを物語る。自身が持つ日本記録は、病に倒れる前にマークした56秒08。だが筋力がさらに戻ってくれば、このハードルもいつか越えていく日がきっと来るだろう。

自由形でも驚異のタイムで代表に

池江の復帰後初レースは2020年8月の東京都特別大会だった。女子50メートル自由形で約1年7カ月ぶりのレースに出場し、26秒32で5位。その当時、ここまでの復活ストーリーを誰が想像できただろうか。

100メートル自由形で大会前の最速タイムは1月に出した55秒35。エントリーした選手では11番手だった。そこから劇的な成長曲線を描き、4月7日の100メートル自由形予選を54秒30、準決勝を54秒36といずれも全体トップで通過。決勝では最初の50メートルを2番手でターンしたが、後半トップに立って目標とした53秒台に突入した。

プールに戻って1年余りと考えると驚異的なタイムといえるだろう。

「アジア大会の顔」から「東京五輪の顔」へ

「思っていたより数十倍、数百倍、数千倍しんどいです」とツイッターに病魔との苦しい闘いをつづったこともある。そんな苦難も乗り越えた揺るぎない強さが今の池江にはある。

2018年ジャカルタ・アジア大会で日本勢最多の6個の金メダルを獲得し、名実ともに「大会の顔」として最優秀選手に選ばれた。当時の輝きを完全に取り戻してきた感がある。

だが池江はもう過去を振り返らない。日本勢がパワーで劣ってきた女子短距離種目での活躍を期し、新たに生まれ変わった池江が「東京五輪の顔」になる。

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