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MGC出場決めた東洋大・柏優吾は学生駅伝の「2強」を脅かすか

2022 9/1 06:00鰐淵恭市
イメージ画像,ⒸChiccoDodiFC/Shutterstock.com
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北海道マラソン2時間11分41秒で2位

2024年パリ五輪に向けて、学生長距離界に新たな力が現れた。8月28日に行われた北海道マラソンの男子で、初マラソンとなる東洋大4年の柏優吾が2時間11分41秒で日本選手トップの2位に入った。

柏は「2時間14分0秒以内で3位以内」という基準を満たし、パリ五輪の代表選考会となるグランドマラソンチャンピオンシップ(MGC)の出場を決めた。学生ではMGC出場権獲得第1号となる。

無名の存在から五輪候補に

柏は学生長距離界のスター選手ではなかった。むしろ、無名に近い存在と言っていいだろう。埼玉県出身で高校は愛知の強豪豊川に。高校2年生の時に全国高校駅伝で花の1区を任され、区間17位だった。当時も、さほど知られた存在ではなかった。

東洋大に進学した後も、学生3大駅伝の経験は1度だけ。昨年の出雲で最終6区を走り、区間7位だった。今年の箱根では初めて選手登録され、9区にエントリーされた。だが、当日の区間変更で補欠に回ったため、箱根を走ることはなかった。

ロードに適性、素材が開花

トラックの自己ベストは5000メートル13分59秒28、1万メートル28分49秒72。今の学生長距離界では「まずますのスピード」といったタイムで、取り立てて速いというわけではない。

ただ、ロードレースとなるハーフマラソンの自己ベストは1時間2分55秒で、今年の日本学生ハーフで15位に入っている。本人もロードの長い距離に適性があることを理解していたのかもしれない。

今回の記録は2時間11分台だが、夏場のレースであることを考えれば、上出来の記録と言っていい。

「鉄紺」の東洋大が躍動へ

柏の台頭はパリ五輪に向けてというだけでなく、学生駅伝界にもとってもうれしい結果だ。

強豪の一つに数えられる東洋大だが、学生3大駅伝では2015年の全日本を最後に優勝していない。箱根では2013年の優勝が最後。近年は学生駅伝の主役を、青山学院大、駒澤大の「2強」に譲っているのが現状だ。

今年も青学大は選手層が厚く、総合力が高い。駒大は学生ナンバー1ランナーの田澤廉、さらにスーパールーキーの佐藤圭汰といったスター選手を擁する。今季の学生3大駅伝ではこの2校の争いになるとの見方が強かった。

ただ、今回の北海道では、柏だけでなく、柏と同期になる東洋大4年の清野太雅が初マラソンに挑み、2時間12分20秒で6位に入った。清野は2年連続で箱根の最終10区を走り、今年は区間2位の好走を見せた選手。清野はMGC出場権をあと一歩で獲得できなかったものの、こちらも上出来の結果だった。

東洋大のエースと言えば、3年生の松山和希、世代ナンバー1の呼び声高い2年生の石田洸介が思い浮かぶが、ここに柏、清野が絡んでくれば面白い。 今年は「鉄紺」のたすきが、躍動する年になるかもしれない。

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