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遠くなった甲子園…立命館大アメフト部が宿敵・関学を倒すために必要なこと

2022 3/21 11:00堀田和昭
立命館大アメリカンフットボール部の藤田直孝監督ⒸSPAIA(撮影・堀田和昭)
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ⒸSPAIA(撮影・堀田和昭)

藤田直孝監督「負けて泣く4回生を見たくない」

甲子園ボウル出場を逃した冬は、いつもより長い。宿敵に負けた悔しさをかみしめ、気持ちを立て直し、闘志を奮い立たせ、やっと新しいシーズンに向かって歩き出す。立命館大アメリカンフットボール部は2016年から6年連続でそんな失意の季節を経験してきた。

「毎年、負けて泣く4回生を見て、もう、こんな姿を見たくないな、と」

今季、就任した藤田直孝監督(49)は静かな口調に熱き思いをにじませた。1994年に立命大が初めて関西1部リーグを制し、学生日本一に輝いた時の主力メンバー。卒業後、トータル4年間を除いて、LBコーチ、副部長として、常にチームに関わってきた。

リーグ4連覇(2002~05)の隆盛も、聖地に一歩届かない近年の挫折も知っている。再建を託すのに、これ以上の人材はいない。

最近10年間は関学が9回甲子園ボウル出場

かつてノルマや目標だった甲子園ボウル出場は、今や立命大の「悲願」といっていい。過去30年間の出場校を年代別に見れば、苦戦が手に取るように分かる。

1992~2001 関学大5回、京大3回、立命大2回
2002~2011 立命大6回、関学大3回、関大1回
2012~2021 関学大9回、立命大1回

「2強」から「関学大1強」へ変化した勢力地図。システムの改編が両雄の明暗を分けた側面は見逃せない。地方の大学にも門戸を開くため、甲子園ボウルが「東西大学王座決定戦」から「全日本大学選手権トーナメント(T)」に形を変えたのが2009年(コロナ禍のため、20年は東西大学王座決定戦で開催)。16年から関西2位にも敗者復活のチャンスが与えられ、両校はリーグ戦と西日本代表T決勝の2度、雌雄を決してきた。

2016、18、21年は関学大が連勝、17、19年は立命大がリーグ戦で勝ちながら、Tで関学大が逆転。一発勝負だった20年も、関学大が制している。「天敵」と呼ぶべき相手を倒すのに、一番チームに足りないものは何か。インタビューの核心に及んだ質問に、新監督は少し考え、間を置いてからこう答えた。

「なかなか難しいですけど…。規律、ですかね。(強かった)昔と比べると、そこが、おろそかになっているのかな、という思いはあります」

アメフットとは、規律のスポーツ。特にオフェンスは、一つのプレーをピッチに立つ11人が共有し、それぞれの役割を全うして、ドライブを進めていく。ただ、指揮官が口にした規律とは、フィールドの中を指すものではない。プレーヤーとしてでなく、一学生、一人の人間としてのあり方だった。

「まず、挨拶ができない。見知らぬ人がクラブハウスへ入ってきても、ちゃんと挨拶できなくなっている。あと、ホントにしょうもないことですけど、バイクの止め方もそう。乱雑に止めていって、それを誰も気づかずに、奥にある車が出せないような状況になってしまう。いろんなことが不十分で、フィールドに出た時だけやればいい、みたいな意識になって、それが関学戦のプレーにつながっているんじゃないかと思いますね」

「もう一度、人間教育を」

チームを強化する方法に限りはない。ウェートトレーニングや走り込みで「体」を鍛えたり、新たな戦術導入や、テクニックを磨く「技」を向上させるより、人間の「心」を見直す方が時間もかかるし、効果を実感しにくい。だからこそ、「もう一度、人間教育を」という藤田監督の言葉に、小手先ではない改革の覚悟がうかがえる。

今シーズンから再び全日本大学選手権のシステムに手が加えられ、西日本と東日本で分かれていたトーナメントが一つに集約。関西リーグの優勝校だけが出場権を得ることになった。

もちろん、「青い壁」を乗り越えなければいけない事実に変わりはない。忍耐の冬から、種をまく春へ。大収穫の秋を信じて、藤田監督がパンサーズの風景を変える。

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