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【ラグビーワールドカップ2023】南半球同士の決勝はニュージーランド有利?

2023 10/27 06:00江良与一
ニュージーランド代表ウィル・ジョーダンと南アフリカ代表マニー・リボック,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

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28日の決勝はニュージーランドと南アフリカ

ラグビーワールドカップフランス大会も残るは決勝と3位決定戦のみとなった。27日(日本時間28日午前4時)にアルゼンチンとイングランドが3位を争い、28日(同29日午前4時)にニュージーランドと南アフリカが決勝に臨む。

今回、予選プールの段階では「北高南低」などと言われていた。フランスがニュージーランドを破り、アイルランドも南アフリカを撃破。準々決勝4試合は奇しくもすべてが北半球の協会と南半球の協会との戦いとなったが、世界ランクから言っても、予選プールの出来から言っても、北半球の協会が4強すべてを占めるのではないかと予想された。

もし、そうなればワールドカップ史上初めての快挙だったが、結果的に4強はアルゼンチン、ニュージーランド、南アフリカ、イングランド。北高南低どころか、北半球の勝ち残りはイングランドのみ。南半球の国々の一発勝負での強さを際立たせる結果となった。

自国開催で初優勝を狙っていたフランスは28-29で南アフリカに敗れ、準々決勝時点で世界ランク1位だったアイルランドは24-28でニュージーランドに屈した。アイルランドは今回も「ベスト8の呪縛」を断ち切ることができなかった。

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「王者の戦い方」が復活したニュージーランド

20日に行われたアルゼンチンvsニュージーランドの一戦は6-44でニュージーランドが圧勝した。攻めてはWTBウィル・ジョーダンのハットトリックをはじめとして7トライの猛攻。守っては強靭なフィジカルのアルゼンチンをノートライ、PG2本のみの6点に抑える、文句のつけようがない勝利だった。

強烈なプレッシャーをかけて、相手FW第3列の出足を止めて奪ったものもあれば、密集戦でのジャッカルからの逆襲で陥れたものも、BKの個人技で決めたものもあり、まさに変幻自在。プレーのすべての局面で相手のプレーヤーにプレッシャーをかけ続け、細かいミスで生じたほころびを確実にトライに結びつけ、圧倒的な点差をつけて戦意を挫く「王者の戦い方」を思い出したニュージーランドの強さばかりが目立った。

開幕戦でフランスに史上初の予選プール敗戦という苦汁をなめたニュージーランドたが、その後ナミビアに71-3、イタリアに96-17、ウルグアイに73-0と大勝していくうちに自信を取り戻した。

準々決勝は昨年のテストマッチ3連戦で1勝2敗と負け越したアイルランド相手に、僅差ながらも終始リードを保って勝ち切り完全復活。アルゼンチン戦の圧勝で勢いに拍車がかかっている。

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タフな肉弾戦を制した南アフリカ

翌21日に行われたイングランドvs南アフリカ戦は15-16の1点差で南アフリカが勝利した。雨天下での試合だったこともあり、両軍ともにキックを軸に前進を図る手堅い試合運び。南アフリカのパントキックは29本、イングランドのパントキックは実に41本を数えた。

派手さには欠けたものの、密集戦でのぶつかり合い、キックされたハイボールの競り合いで選手たちの肉体から火花が散るような文字通りの肉弾戦が展開された。両軍ともにディフェンスラインを突破するのが困難だったが故に、フィジカルバトルは白熱したものの、トライは南アフリカがラインアウトから奪った1本だけ。相手のミスを誘ってのPG、あるいは相手の隙をついてのDGをお互いが狙い合う展開が続いた。

イングランドは僅差ながら終始リードを保っていたが、最終的な勝負の決め手となったのはスクラム。後半になってから南アフリカはマイボール、敵ボールにかかわらず、すべてのスクラムで強烈なプレッシャーをかけて、イングランドFWを粉砕した。

現時点では世界一と言っていい強力スクラムを組み続けた。そして後半38分にスクラムでコラプシングの反則を得て、SOポラードが冷静にPGを決めて逆転。イングランドを土俵際でうっちゃった。この試合における自軍の強みを理解し、最後までその強みを活かしきって成し遂げた見事な逆転勝利だった。

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決勝戦の展望

南半球の両雄の顔合わせとなった決勝。両チームは通算105回対戦しており、ニュージーランドが62勝4分39敗とリードしている。

今年は2回対戦しており、7月のザ・ラグビーチャンピオンシップでは35‐20でニュージーランドが勝ち、8月のテストマッチでは35-7で南アフリカが勝っている。28点差での敗戦はニュージーランド史上最大であり、「今大会のニュージーランドは強くない」という前評判を形成する一因となった。

この両国のW杯決勝での対戦は意外なことに今回が2度目。前回の対戦は1995年で、人種隔離政策に対しての国際社会からの制裁でワールドカップから締め出されていた南アフリカが初めてワールドカップに参加した年だった。この時は15‐12で南アフリカが勝ち、初出場初優勝という偉業を成し遂げている。

勝敗の予想は非常に難しいが、準決勝の戦いぶりから考えると、ややニュージーランド有利ではないか。先にも述べた通り、「王者の戦い方」を完全に思い出したニュージーランドには勢いが感じられる。

南アフリカがキックを多用してきても、アンストラクチャーな場面からのカウンターでトライ奪取を得意とするニュージーランドとしては望むところだろう。アルゼンチン戦が圧勝だったことで、肉体的なダメージが軽そうだと考えられるところも有利と判断する材料になる。

対する南アフリカは、圧倒的な強さを誇るスクラムを軸に、俗に「緑の壁」と呼ばれるデイフェンス網をしっかり張り巡らして、ニュージーランドの選手たちを好き勝手に走り回らせないような戦いに持ち込みたいところだ。

その上でPG、DGでの得点を手堅く狙うと予想されるが、そうなるとキッカーを務めることになるSOに誰を起用し、どこで交代させるかが一つのポイントになる。準決勝で先発したリボックはこれまでの全試合を通じてプレースキックの成功率が低いので、ベテランのポラードを起用したいところだが、故障から復帰したばかりのポラードをフルタイムプレーさせることには不安が残る。

準決勝のようにリボックを先発させて、前半の終盤か後半頭からポラードに交代させるか、あるいはポラードを先発させて、リボックにチェンジするか。ニーナバーHCの決断に注目だ。

4年に一度のラグビーの祭典の最後を飾る頂上決戦は、インパクトプレーヤーとなる控え選手も含め、両チームの総力戦となることは間違いない。どちらが勝っても通算4回目の優勝となり、世界最多優勝国という名誉もついてくる。

南アフリカは2011年、15年のニュージーランド以来の2連覇もかかる。これぞ世界の頂上決戦と呼ぶにふさわしい好試合を期待したい。

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