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【日経賞】復権を示す8馬身差圧勝! タイトルホルダーが魅せた、巧みなレース

2023 3/27 10:50勝木淳
2023年日経賞、レース結果,ⒸSPAIA
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タイトルホルダー、復権を示す8馬身差圧勝

タイトルホルダーが1975、76年ホワイトフォンテン以来47年ぶりに日経賞を連覇した。これで中山芝2500mを4度走り、3回逃げてペースを握り、2勝をあげた。もっとも厳しかったのはパンサラッサに主導権を譲った21年有馬記念(1000m通過推定59.5)であり、自身が逃げた際はむしろスローに近く、1000m通過(推定)は22年日経賞1.03.6(やや重)、有馬記念1.01.2(良)、そして今回は1.02.8(不良)。馬場差を考えると有馬記念と今回は近いものがある。

だが結果は有馬記念9着、日経賞勝利と正反対。もちろん、相手関係の違いはある。自身の走破時計は有馬記念2.34.1、日経賞2.36.8で馬場を加味すると、今回が少し遅いぐらい。それで2着ボッケリーニに8馬身差、相手が楽だったのは事実だ。

加えて、タイトルホルダーの道悪適性の高さもある。これで良馬場以外【3-1-0-1】。着外1が昨年の凱旋門賞だ。中山不良馬場で8馬身ぶっちぎる馬が手も足も出なかったパリロンシャンの重馬場は次元が違うと言わざるを得ず、この日経賞の結果はそれを浮き彫りにしたものでもある。改めて競技の違いを感じた。

凱旋門賞のダメージからタイトルホルダーは立ち直った。昨春の天皇賞(春)、宝塚記念で現役最強馬の称号を勝ち得た名馬の復活は明るいニュースだ。昨春の2レースはラップ分析の常識を超えるだけの内容であり、あれだけの競馬を演出し、勝ちきれるタイトルホルダーの存在は貴重だ。パンサラッサやイクイノックス、ドウデュースとの激突はいつ実現するだろうかと興味は尽きない。

人も馬も経験から逞しくなる。大きな負荷をかけた筋肉は回復しながら、さらに強くなる。いわゆる「超回復」がタイトルホルダーのなかでも起こっているのではないか。あわせてタイトルホルダーは走りのリズムからさらに大人びた印象も受ける。序盤は6.9-11.7-12.0で後ろをけん制し、正面スタンド前から2コーナーにかけて12.9-12.6-13.1と息を整え、動きたくても動けない向正面12.9-12.7-12.8で勝負あり。残り800m12.4-12.5-11.9-12.4。ジワリとギアチェンジし、4コーナーから残り200m11.9で番手ディアスティマを振り切った。必要最少手で8馬身ちぎったレース振りは道悪巧者でもあるが、レース巧者でもある。春の淀は楽しみでしかない。


敗因は明らかだった9着アスクビクターモア

一方、アスクビクターモアはタイトルホルダーから2秒6遅れた9着に敗れた。同じ菊花賞馬であり、先行型なので比較されやすいが、タイプはかなり違う。アスクビクターモアは大跳びのディープインパクト産駒で、良馬場でこそ推進力を生む。菊花賞後、休養していた分、万全でなかったのはスタートの出遅れに現れている。そこに不良馬場が重なれば、大敗も納得の範疇に入る。

3歳春に1月5日から4戦して日本ダービー3着、2.22.2を記録し、秋はセントライト記念2着後に菊花賞を勝った。3歳シーズンに6戦も走って結果を出した、ディープインパクト産駒にしてはタフな馬で、使えば次は変わってくるだろう。この敗戦をもって色々評価を決めてしまうのは早いだろう。それはタイトルホルダーと同じことだ。

2着ボッケリーニは日経賞2着、目黒記念V、京都大賞典2着の実績を考えれば、5番人気は妙味があった。こちらは間隔をとったときに結果を出す戦歴。前哨戦で強く、GⅠで力を出し切れないジレンマはあるものの、GⅡでの堅実味はしっかり味方につけたい。

3着ディアスティマはタイトルホルダーにプレッシャーをかけつつも、スタミナを武器に展開を味方につけた。結果的にタイトルホルダーの強さを引き出す役回りになってしまったが、スタミナや先行力、時計を要する馬場への適性など見どころはあった。

4着ライラックは展開と馬場の影響を受け、伸びあぐねた後方勢で唯一掲示板に載った。やはりエリザベス女王杯2着の結果通り道悪は走る。もう少し前がやり合ってくれればといった感じだろう。決して馬体が大きいわけではないが、道悪巧者は得てして小さい馬が多く、ライラックもその典型だ。

同じステイゴールド系、ゴールドシップ産駒マカオンドールは内からしぶとく伸びて5着。こちらも時計勝負だと分が悪く、こういった馬場で力を発揮する。10か月ぶりで道中は引っかかり気味の追走。スタミナ消耗の形であっても伸びてきたのは価値がある。脚元の関係もあり、緩い馬場なら重賞で上位争いに加われるのではないか。


2023年日経賞、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。

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