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【ヴィクトリアマイル】安田記念と酷似する厳しいラップ 前傾、後傾どちらでも脚を使える馬に注目!

2021 5/11 11:00高槻とおる
主な東京マイル重賞のラップ比較ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

安田記念と酷似するヴィクトリアマイルのレースラップ

東京マイルのGIレースでは、スピードだけではなく、中距離に対応できるくらいのスタミナが求められると聞いたことがないだろうか。まあ、東京の長い直線ならそうかもしれないと漠然と納得していたのだが、せっかくこういった原稿を書く機会をいただいているので、ヴィクトリアマイル週に合わせて、過去データでしっかり確認してみようと思う。

東京コース 主なマイル重賞の平均ラップ比較良馬場のみを対象(2011~2020年)ⒸSPAIA


まずは東京マイルの主な重賞で、良馬場のラップタイムを比較してみた。古馬とはいえ牝馬のGIレース、ヴィクトリアマイルはなんとなく緩めのラップからの速い上がりの傾向をイメージしていたのだが、平均600m34秒2、1000m57秒2、上がり3F34秒5の数字は安田記念とまったく一緒。レースの厳しさはそん色ないようだ。

対してGⅢの東京新聞杯、富士Sは35秒前半~59秒前後の流れで、上がりが34秒前半。前半ゆったりで、上がりの決め手勝負の傾向。これらのレースで好走した馬が、安田記念やヴィクトリアマイルで凡走するシーンはイメージしやすいだろう。前半で脚を使わされる分、直線で速い脚、切れる脚が使えない。中距離に対応できるスタミナというより、GIの厳しい流れと、底力を求められる戦いに対応できないのだろう。

NHKマイルCのラップは600m34秒5、1000m58秒2と少し緩いが、そこは3歳春のレース。3Fの前後半差0秒2を見ても、この時期の3歳馬にとっては厳しい流れなのだと判断できる。簡単なラップ比較ではあるし、開催年によって変化はあるのだが、なんとなくでも東京コースのGIの厳しいペースを理解いただけたのではないだろうか。

位置取りによる有利不利が少ないヴィクトリアマイル

3つのGIに共通する厳しい流れだが、活躍馬の脚質やポジション取りといった傾向も同じだろうか。それぞれ、4角のポジション別成績を見てみよう。

4角ポジション別成績NHKマイルC(2011~2020)ⒸSPAIA
安田記念ⒸSPAIA
ヴィクトリアMⒸSPAIA


NHKマイルCも3歳馬にしては厳しいラップと書いたが、10年で4角先頭の馬が半数の5頭も複勝圏内に入る活躍ぶり。安田記念でも4角先頭馬の連対率は30%あるのだが、ヴィクトリアマイルに関しては、4角先頭馬の連対は2014年1着のヴィルシーナだけ。

4角先頭の10頭中9頭が7番人気以下馬だけに、逃げ馬を簡単に軽視するのは危険だが、厳しい流れもあり、4角先頭から押し切るレースはかなりハードルが高い。ポジションごとに偏りなく連対馬が出ていて、力さえあれば、どの位置からでも好勝負が可能なレースともいえるだろう。

前年のヴィクトリアマイル出走馬で狙えるのは?

ヴィクトリアマイルといえば、前年の同レース出走馬の活躍もよく知られているところ。ここまでのデータを振り返ると、牝馬同士ではあまりない厳しい流れを経験していることが、翌年に強みとなって生きてくる部分もあるのかもしれない。

ちなみに、過去10年のレースには前年のヴィクトリアマイル出走馬が45頭参戦し、【4-4-3-3-3-28】の成績を残している。勝率8.9%、連対率17.8%、複勝率24.4%で、やはり注目したい存在といえるだろう。3着以内に好走した11頭の前年のヴィクトリアマイル成績は、1着馬が5頭、3着馬が2頭、6~8着馬が4頭。

掲示板に載れなかった4頭はサウンドキアラ、ショウナンパンドラ、ケイアイエレガント、マイネイサベルだが、サウンドキアラは京都金杯、京都牝馬S、阪神牝馬S、ショウナンパンドラはオールカマー、ジャパンC、ケイアイエレガントは京都牝馬S、マイネイサベルは中山牝馬Sと、いずれも次のヴィクトリアマイル出走までに重賞を勝っていた。前年の好走馬だけではなく、凡走馬でも直近1年に重賞勝ちがある馬は警戒した方が良さそうだ。

今年は将来性の高い4歳馬のレースぶりが楽しみだが、安田記念やヴィクトリアマイルといった本当に厳しい東京GIの経験がまだないだけに、軸は安田記念馬グランアレグリアでいいのではないか。昨年の経験が、4歳馬相手の大きな強みになると思う。4歳勢では、ともにここ2戦で厳しい流れとスローの瞬発力勝負に難なく対応して好成績を残したデゼルとマジックキャッスルに注目している。

自分の得意な流れで素晴らしい決め手やスピードを発揮している馬はほかにもいるのだが、デゼルとマジックキャッスルは底力の問われる展開でも、しっかり脚を使えるところに魅力を感じる。前傾ラップでも後傾ラップでも力を発揮できることは、東京のGIで大きな強みになると判断した。

NHKマイルC2着の成績があるレシステンシアも高い評価を受けそうだが、同レースの4角先頭の馬の好成績を知ると、評価を少し割り引きたくなる。まあ、人気馬を軽視できるデータがあれば、すぐに飛びつくファン心理なのだけど…。穴馬探しにはレース当日まで迷いそうだが、データ的に昨年のヴィクトリアマイル5着馬で、その後、阪神Cで重賞を勝っているダノンファンタジーは押さえておきたい。

ライタープロフィール
高槻とおる
グリーンチャンネルで結果分析、レース分析番組の構成作家を担当していた。現在は経営者取材などライターとして幅広く活躍中。ラップを長年研究しているが、実は馬券はパドック派。

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