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井上尚弥に期待されるWBCバンタム級王座「奪回」と世界最速記録

井上尚弥,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

6月7日、ノニト・ドネアと3団体統一戦

プロボクシングのWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(29=大橋)とWBC同級王者ノニト・ドネア(39=フィリピン)が戦う世界バンタム級3団体統一戦が6月7日、さいたまスーパーアリーナで行われる。

ボクシングの長い歴史上でも、日本人の複数団体統一王者は3人しかいない。八重樫東を破ってWBAとWBCのミニマム級王座を統一した井岡一翔、同じミニマム級でWBOとIBFのベルトを巻いた高山勝成、ライトフライ級でWBAスーパー王座とIBF王座を統一した田口良一だ。

渡辺二郎もWBAスーパーフライ級王者時代にWBCの対抗王者だったパヤオ・プーンタラットを破り、事実上の王座統一を果たしたが、当時はWBCが12回戦制、WBAが15回戦制だったため、12回戦で判定勝ちした渡辺のベルトをWBAが剥奪。統一は幻となった。

いずれにしても王座統一は簡単ではなく、歴史に残る快挙なのだ。ましてや3団体統一なら日本人初。井上はすでに数々の実績を残しているが、またひとつ勲章が加わることになる。

日本人名王者が多いWBCバンタム級

そして、ドネアが持つWBCバンタム級は日本ボクシング界にとって深い縁のあるタイトルだ。

1994年12月、暫定王者・辰吉丈一郎と正規王者・薬師寺保栄が争ったのがWBCバンタム級のベルト。両者ともに1億7000万円と報じられたファイトマネー、薬師寺の地元・東海地区で50%を超えたテレビ視聴率など、全てが桁違いのスーパーファイトだった。

その後、2度目の王座復帰を果たした辰吉からベルトを奪ったウィラポン・ナコンルアンプロモーションを見事に倒したのが長谷川穂積。WBCバンタム級王座を実に10度も防衛し、フェザー級まで3階級制覇した。

長谷川からタイトルを奪ったフェルナンド・モンティエルを2011年に2回KOしたのが、若き日のドネアだった。ドネアは初防衛後にベルトを返上、スーパーバンタム級で4階級制覇を達成する。

空位になったWBCバンタム級王座決定戦でクリスチャン・エスキベルを倒したのが山中慎介。その後、具志堅用高の日本記録に「あと1」まで迫る12度の防衛を果たして長期政権を築いた。

山中がルイス・ネリにベルトを明け渡した後、井上尚弥の弟・拓真が暫定王座に就いたこともあった。拓真に勝ったノルディーヌ・ウバーリを破って現在、王座に君臨しているのがドネアという流れ。WBCバンタム級のベルトには日本人ボクサーの血と汗と涙が染み込んでいるのだ。

ドネアに勝っても4団体統一は不透明

6月に行われる注目の一戦だが、39歳というドネアの年齢を考えても井上の優位は動かない。2019年11月の初対戦では、井上が強烈なボディブローでダウンを奪って判定勝ち。井上は今がピークとも言え、下降線を辿る5階級王者に負ける可能性は低い。

ドネアの左フックでカットした右まぶたの古傷は気になるが、注意深く戦えば終盤のノックアウトもあるだろう。WBCバンタム級の緑色のベルトは、晴れて日本に戻ってくると見る。

問題はその後だ。井上は4団体統一に執念を見せているが、最後のひとつ、WBOバンタム級は混沌としている。王者ジョンリエル・カシメロは5度目の防衛戦の直前に、禁止されているサウナを利用したとして急遽、試合中止。対戦予定だったポール・バトラーが暫定王座に就いており、カシメロは王座剥奪も噂されている。

かねてから井上への挑発を繰り返すカシメロと井上の対戦が実現すれば盛り上がるのは間違いないが、これまで決まりそうで決まらなかった経緯を振り返っても、簡単に話が進むことはないだろう。

世界最速4階級制覇はデラホーヤの24戦目

「35歳まで現役」を公言している井上も29歳になり、残された時間は決して多くない。4団体統一にこだわってバンタム級にとどまるのか、スーパーバンタム級に上げて4階級制覇を狙うのか、決断を迫られる時がいずれ来る。もし、ドネア戦後にすぐスーパーバンタム級挑戦となると、世界最速記録がかることになる。

これまで世界最速の4階級制覇はオスカー・デラホーヤの24戦目。現在、22戦全勝(19KO)の井上はドネア戦が23戦目となり、デラホーヤの世界最速記録に並ぶ可能性があるのだ。

いずれにせよ、どの道を選んだとしても日本人には未知なる領域。「日本ボクシング界の至宝」井上尚弥から今後も目が離せない。

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