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村田諒太のダウンとガウン、ゴロフキン戦で2つの初体験…進退は?

2022 4/12 06:00森伊知郎
村田諒太,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

史上最大のメガファイト、大健闘も9回TKO負け

9日にさいたまスーパーアリーナで行われたボクシングのWBA、IBF世界ミドル級王座統一戦でWBA同級スーパー王者の村田諒太(帝拳)はIBF同級王者のゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)に9ラウンド2分11秒TKOで敗れた。

アマチュアとして2012年のロンドン五輪金メダル。プロ転向後はWBA王者と、プロアマ両方で世界の頂点を極めた村田は、間違いなく日本ボクシングの歴史に残るボクサーになり、実現しただけでも大快挙といえるゴロフキンとのメガファイトを戦った。

最後は右フックを被弾してダウンし、レフェリーストップ。勝利を収めることはできなかったが、この試合では村田にとって二つの『初』があった。試合後の本人は進退を明らかにしていないが、この二つのことが今後の決断の要因となりそうだ。

生涯初のダウン後に見せた笑み

「鉄球のように重く、破壊力がある」とも評されるゴロフキンのパンチ。世界戦で18連続KO 勝利の記録を作った強打を被弾しても村田はひるまなかった。逆に追い詰めるような場面や、カウンターの一発を警戒したゴロフキンが自ら下がるシーンもあった。

最後は右フックでダウン。レフェリーがTKOを宣告したのと同時に村田陣営がタオルを投げ入れて「日本ボクシング史上最大の一戦」は幕を閉じた。

筆者は村田から「僕、練習も含めて一度もダウンしたことがないんですよ」と言われたことがある。試合前日の計量リミットが72.5キロ。減量期に入る前は80キロほどの体重になることもあるミドル級のパンチの威力は想像を絶する。練習を間近で見ると、人間の拳がぶつかる音というよりも、軽自動車が衝突でもしたのか?と思わせる音に恐怖感を覚えることもあるほどだ。

世界戦前には海外からスパーリングパートナーを呼び、時に相手が90キロ超と「ヘビー級」の体格を持つこともあったが、それでも倒れないのだから、いかに打たれ強いかがわかる。

ゴロフキン戦の6ラウンドにはパンチをもらった際にマウスピースが飛ぶシーンもあった。これは被弾の瞬間に歯を食いしばれていなかった、ということ。普通ならこれで倒れてもおかしくないが、村田は耐えた。しかし9ラウンドに右フックを食らうとリングにひざから落ちた。

筆者の見ていた位置からはわからなかったが、レフェリーにストップを宣告された時の画像を見ると村田は笑みを浮かべている。これはボクシング人生で初のダウンをしたことで、何かが吹っ切れたのではないかと感じさせられた。

Tシャツ一枚での入場を貫いた村田

また、試合後はゴロフキンから、カザフスタンの民族衣装をあしらったガウンをプレゼントされた。「私の国では尊敬する人に贈る習慣がある」とゴロフキンが理由を説明したように、大健闘した村田への敬意を現して一度自分が着たものをリング上でわざわざ着せてくれたものだが、村田がボクシング人生でガウンを身に付けたのはこれが初めてだ。

チャンピオンクラスのプロボクサーは試合の入場時にオリジナルデザインのガウンを身にまとっていることが多い。多くはスポンサーが製作費を負担。さらに選手の知名度、人気度によってはいくつもの広告が入り、それが選手にとっての収入源になる。

アマチュアがオリジナルのガウンを着用して試合に登場することはない。村田は2013年8月のプロデビューから一貫して入場時はTシャツ一枚のスタイルで、「パイレーツ・オブ・カリビアン」のメロディーとともにリングへと入場してきた。

デビュー当初の時期はともかく、何かしらのタイトルを取る、あるいは世界戦をやるなどの“節目”にはガウンを着るようになるのが普通の流れ。村田レベルになればそのことでかなりの金額の収入が増えるのは確実だが、「これまでTシャツでやってきて、世界チャンピオンになった途端にガウンとか着るようになったら『何や、それは』って言われるじゃないですか。だから僕はずっとTシャツだけでいきますよ」と話してくれたことがあった。

そのポリシーを“曲げた”シーン。あの状況でゴロフキンがガウンを着せようとしてくれているのを断るのは難しい。とはいえ、袖を通す際の村田の顔には何か一区切りついたような雰囲気が漂っていたことを感じさせた。

激闘から一夜明けた10日も、村田は今後についての明言を避けた。いつ、どのような選択をするのかは本人が決めることだが、ゴロフキンを相手に日本のボクシング史上最大といってもいい試合をしたこと、プロとアマの両方で頂点を極めた功績は色あせることはない。

何よりも、ミドル級で世界の「トップ・オブ・トップ」と互角に渡り合う試合が日本で見られたことに感謝しかない。ゆっくり休んで、納得のいく結論を出してほしいものだ。

《ライタープロフィール》
森伊知郎(もり・いちろう)横浜市出身。1992年から2021年6月まで東京スポーツ新聞社でゴルフ、ボクシング、サッカーやバスケットボールなどを担当。ゴルフではTPI(Titleist Performance Institute)ゴルフ レベル2の資格も持つ。

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