「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

Vリーグ久光が復活の兆し!出産から復帰2年目のアキンラデウォが決定力を取り戻せた理由

2022 3/26 11:00米虫紀子
久光スプリングスのアキンラデウォ・フォルケ,ⒸV.LEAGUE
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸV.LEAGUE

若手が成長しバランスの取れたチームに

バレーボールVリーグ女子の久光スプリングスが、今季は復活の兆しを見せている。

かつては常勝チームだった。2011-12シーズンから8年連続でファイナルに進出し、そのうち5度優勝。しかしセッターの古藤千鶴やサーブレシーブの中心となっていたアウトサイドヒッターの新鍋理沙といった中心選手が引退すると、世代交代に苦しんだ。

2019-20シーズンは7位、昨季は8位と低迷。だが今季は現在4位で、上位3チームによるファイナルステージ進出に食い込むべく奮闘している。

今季は中川美柚、平山詩嫣といった若手選手が頼もしい活躍を見せ、その若手を、東京五輪代表の石井優希や、栄絵里香、井上愛里沙、戸江真奈といった経験のある選手たちが支え、バランスが取れている。

アキンラデウォはスパイク決定率1位

それに加え、東京五輪で金メダルを獲得したアメリカ代表ミドルブロッカーのアキンラデウォ・フォルケが存在感を取り戻したことが大きい。アキンラデウォとセッター栄ののコンビが、攻撃のエンジンとなっている。

相手ブロックをものともせず、驚異的な高さから打ち込むブロード攻撃やクイックは、今季高い決定率を誇り、スパイク決定率57.1%(3月25日時点)はリーグ1位だ。

アキンラデウォが初めて久光でプレーしたのは2017-18シーズン。スピードと高さを兼ね備えた世界レベルのプレーで大きく貢献し、チームはそこからリーグ連覇を果たした。

出産のため2019-20シーズンはチームを離れ、その後、現役復帰し、昨シーズン久光に帰ってきた。しかし昨季は以前ほどの存在感を放てなかった。

出産経て「速さ」から「高さ」へ

そこから今季、何が変わったのか。セッターの栄は、アキンラデウォとのやり取りを明かした。

「お互いにコミュニケーションをとりながらやっているんですけど、ルーク(アキンラデウォ)は出産を経て戻ってきているので、子供を産む前の体と、産んだ後の体では、やっぱり体のキレが違う、という話をしていました。以前はスピードで勝負できていたけど、そのスピードが今は落ちている、と。

でも高さは、私はすごく跳んでいるなと感じていたので、『じゃあその分、高さを生かして攻めていこう』という話をしました。もちろんスピードも大事ですけど、今は何より高さをしっかりキープしようとしています。

ルークも要求してくれるので、そこは常に意識して、コミュニケーションをとりながら、上げるようにしています」

スピードを緩めて高さを重視した分、1本目が少し乱れたところからでも、アキンラデウォにトスを上げやすくなり、打数も増えた。

相手ブロックは厚くなるが、ブロックが2枚ついてもその上から打ち込んでしまう。以前よりも高いのではないかと思うほど、今季は跳んでいる。

「特にここ一番というところで、アドレナリンが出ている時は、普段(トスを)上げたことがないぐらいの高さで打ってくれるので、本当にすごいです」と栄は笑う。

アキンラデウォの攻撃が機能すれば、ブロックは引きつけられ、サイド陣が楽になりチーム全体の攻撃のリズムができる。

上位勢と直接対決で逆転も

レギュラーシーズンの残り2週間はハードな試合日程となり、JTマーヴェラス、東レアローズ、NECレッドロケッツという上位3チームとの直接対決も多く残しているが、その分まだ3位以上に浮上する可能性もある。

昨年12月に行われた皇后杯の優勝によりチームが成長したように、この最終盤の熾烈な戦いが、チームをまた一段階進化させるに違いない。

【関連記事】
パナソニック深津英臣、Vリーグ通算230試合出場は通過点「毎年このメンバーで優勝を」
Vリーグをもっと身近に!高校生や地域との距離を縮めるサントリーの取り組み
現役大学生Vリーガー大塚達宣、パナソニックのホープが急成長