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【オークス】レースセンス、勝負根性、血統よし! スターズオンアース距離延長歓迎だ

2022 5/19 06:00坂上明大
フローラS馬場/展開バイアス:内有利,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

残り300mからの驚異的な末脚

3歳牝馬クラシック第2戦・オークス。ほとんどの馬にとって経験がない2400mという長距離が舞台であり、特に桜花賞組にとっては800mもの距離延長という過酷なローテーション。現時点での完成度はもちろんのこと、距離適性にも注意しなければならない難解な一戦だ。

【忘れな草賞】
週中に降雨がなく、土日ともに速めの馬場状態での開催。さらに、Bコース替わり初週とあって内有利のトラックバイアスも顕著であった。レースは3着馬グランスラムアスクの単騎逃げで前半1000m61.6秒のスローペース。トラックバイアスも考慮すると「内前有利」のレースと評価する。

1着馬アートハウスは馬群の中団で脚をタメ、3角~直線では内をつく形。うまく流れに乗った面は否定できない。グランスラムアスクがスイートピーSで5着と敗れたことからメンバーレベルも高くなかっただろう。

ただ、本馬自身は勝負どころで包まれて、進路を確保したのは残り300m前後でのこと。その後に見せた瞬発力が素晴らしく、ラスト1Fは11.1秒を計時。阪神芝2000m戦でラスト1F11.1以下を計時したのは本レースが5例目で、他の勝ち馬にはアグネスタキオンやラキシスなどGⅠ級の面々が並ぶ。それでいて、勝ち時計自体も忘れな草賞で歴代3位の好時計。展開利を考慮しても、十分に世代上位の評価が与えられる勝ちっぷりであった。

高い総合力で世代を統一

【桜花賞】
忘れな草賞と同日の開催。本レースは外回りの芝1600m戦ではあったが、内回りと同様に内のアドバンテージが大きいトラックバイアスであった。「内有利」。レースはカフジテトラゴンが先手を取り、前半1000mを桜花賞の過去10年平均と同じ58.8秒で通過。内有利のトラックバイアスの分やや前が有利ではあるが、展開による極端な差はなかっただろう。

1着馬スターズオンアースは中団馬群で流れに乗り、直線は馬群を割って接戦を制す。トラックバイアスは向いたが、3角で逆手前になり、直線では追い出しを待たされる面も。それでも、ラスト1Fはサークルオブライフと大差がなく、レースセンスや勝負根性、血統面も含めて世代トップの評価を与えたい実力馬である。

2着馬ウォーターナビレラは好スタートから2番手につけ、直線もしぶとく粘ってのハナ差2着。着順でも内容でもスターズオンアースが上位の評価。オークスでの逆転はなかなかハードルが高そうだ。

4着馬サークルオブライフは後方待機策からの外差しの形。ラスト1Fはおそらくメンバー中最速タイを計時しており、展開が向かない中で素晴らしい末脚を発揮した。やや行きたがる面を見せただけに、オークスでは折り合い面が鍵となりそうだ。

5着馬ピンハイは4角逆手前、6着馬パーソナルハイは直線で寄られる不利を受けるなどややスムーズさを欠く形ではあったが、ともに内枠から内々を通過した馬である点には要注意。

開幕週のトラックバイアス

フローラS馬場/展開バイアス:内有利,ⒸSPAIA


【フローラS】
開幕週、かつ昨年10月以来となるAコースでの開催。内目の馬場状態が非常に良く、土日通して「内有利」のトラックバイアスが続いた。レースはパーソナルハイが気風良く逃げて、前後半1000m60.2-60.2のイーブンペース。ただ、2番手以降はやや離れた形で、前半1000m60.8程度の落ち着いた流れでレースが進行した。

1着馬エリカヴィータは好位のインで脚をタメ、直線は残り400mからの追い出し。自身の上がり3Fは11.6-11.2-11.2程度と上々の時計を残しており、序盤のレースぶりに進境が見られた点も高く評価できる。ただ、トラックバイアスが向いた点は考慮する必要がありそうだ。

5着馬ルージュエヴァイユは最内枠からラチ沿いの後方で脚をタメたが、直線は進路取りに苦労し、結果的に外に出す形に。自身の上がり3Fは11.2-11.2-11.2程度。勝負付けが済んだと見限るのは危険だ。

桜花賞vs遅咲きの素質馬

スターズオンアースは高い総合力で桜花賞を制したが、母母スタセリタ(2009年仏オークス)、母の半妹ソウルスターリング(2017年オークス)、父ドゥラメンテ(2015年皐月賞、日本ダービー)という中距離血統馬。距離が延びる今回はさらに高いパフォーマンスが期待できる。相手筆頭はアートハウス。まだ底を見せていない素質馬だけに、世代最高峰のレースでどれだけの走りを見せてくれるかが楽しみだ。

注目馬:スターズオンアース、アートハウス

※記事内の個別ラップは筆者が独自に計測したものであり、公式発表の時計ではありません。

ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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