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折り合い克服、名手が掴んだハナ差の頂点 2012年日本ダービー馬・ディープブリランテ

2022 5/19 11:00SPAIA編集部
2012年日本ダービーのレース結果,ⒸSPAIA
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日本ダービーまであと10日

2022年の日本ダービーまで残り10日。今回から連載で、過去10年の日本ダービーを一戦ずつ振り返っていく。

本番で克服した折り合い

「最も運のいい馬が勝つ」と言われる日本ダービー。競走馬にとっての幸運とは何だろうか。枠順、展開、馬場状態。そして、「人馬一体」と言えるほどの名手、名伯楽との出会いもそのひとつだろう――。

2012年の日本ダービー、1番人気に推されたワールドエースは、デビューから5戦全てで連対しているディープインパクト産駒。続く2番人気は皐月賞馬のゴールドシップ。

伏線は皐月賞。前日の中山グランドジャンプが勝ち時計5.02.9という記録的な不良馬場からの回復途上で行われた第一冠は、4コーナーでほとんどの騎手が内から10頭ほどの馬場を避ける特殊な展開となった。

他馬が嫌った荒れ馬場、インを猛然と進み、コーナリングだけで11頭をかわす、通称「ゴルシワープ」を敢行して勝ち星をもぎとったのがゴールドシップ。対照的に、内ラチから20頭は離れているかという大外から、直線の急襲むなしく2着に終わったワールドエース。話題の中心はこの2頭の再戦だった。

そして単勝8.5倍、離れた3番人気がディープブリランテ。スプリングS(2着)でも皐月賞(3着)でも序盤で激しく行きたがる面を見せた同馬にとって、試練の400m距離延長。NHKマイルCでの進路妨害により騎乗停止処分を受けていた主戦の岩田康誠騎手が調教からコンタクトを取り、本番を迎える。

ゲートが開くと、一目散にゼロスがハナに立つ。外枠から京都新聞杯の勝ち馬トーセンホマレボシが2番手へ。好スタートを切ったディープブリランテはなだめて内の4番手に収まる。青葉賞馬フェノーメノが外目の7番手。

ワールドエースは五分の発馬から中団10番手、ゴールドシップはスタートから懸命に追っていくが13番手という位置でレースが進む。

600m通過後からゼロスは11.7-11.8-11.7と勢いを増していく。この流れは「我慢」が課題のディープブリランテにとっては僥倖だった。あれだけ難しかった折り合いをクリアして、6戦目のコンビとなる岩田騎手のゴーサインを静かに待った。経済コースを回りつつも、進路取りの心配がない離れた4番手。まさに完璧な展開、完璧な騎乗という言葉がふさわしい。

4コーナーの出口付近から仕掛けた岩田騎手は左にモタれる相棒を矯正しながら早め抜け出しの競馬を選択。トーセンホマレボシをかわして先頭に立つ。ワールドエースやゴールドシップも追い上げるが、もはや届かない決定的なリード。

そこに唯一迫ってきたのがフェノーメノ。ダービー20回目の騎乗、ベテラン蛯名正義騎手が渾身の追いで一完歩ずつ差を詰め、並びかけたところがゴールだった。

同じ勝負服の2頭による際どい争いは、わずかにディープブリランテに軍配が上がった。ハナ差で掴んだ世代の頂点は、岩田騎手にとっても、のちに三冠トレーナーとなる矢作芳人調教師にとっても、初めての栄光であった。


2012年日本ダービー・全着順
1着 ディープブリランテ 岩田康誠 2.23.8
2着 フェノーメノ 蛯名正義
3着 トーセンホマレボシ C.ウィリアムズ
4着 ワールドエース 福永祐一
5着 ゴールドシップ 内田博幸
6着 コスモオオゾラ 柴田大知
7着 トリップ 田辺裕信
8着 エタンダール 松岡正海
9着 ベールドインパクト 藤岡佑介
10着 グランデッツァ 池添謙一
11着 ジャスタウェイ 秋山真一郎
12着 モンストール 柴田善臣
13着 アルフレード 武豊
14着 スピルバーグ 横山典弘
15着 クラレント 小牧太
16着 ゼロス 川田将雅
17着 ブライトライン 佐藤哲三
18着 ヒストリカル 安藤勝己


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