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ボクシング世界王座防衛回数ランキング、寺地拳四朗は具志堅用高を超えるか?

寺地拳四朗Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

寺地拳四朗が史上6位の8度目防衛

プロボクシングのWBC世界ライトフライ級王者・寺地拳四朗(BMB)が8度目の防衛を果たした。4月24日に行われた防衛戦で同級1位・久田哲也(ハラダ)からダウンを奪い、3-0の判定で完勝。昨夏に飲酒トラブルを起こしていたことが11月に発覚し、期せずしてブランクをつくったが、1年4カ月ぶりのリングで無敗の18連勝(10KO)をマークした。

真正面から打ち合うことなく、左ジャブを突きながら相手のパンチを外してカウンターを打ち込む技術は一級品だが、派手さがなく万人受けするスタイルではないこともあり、テレビの地上波中継はなかった。これまでの防衛戦も他の世界戦の前座として組まれることが多く、知名度は高いとは言えない。

しかし、世界王座8度の防衛は日本のジム所属の男子選手では史上6位タイ。もっと評価されてしかるべきボクサーだろう。

いまだ破られていない具志堅用高の防衛記録V13

これまでの日本の最多防衛記録は元WBAライトフライ級王者・具志堅用高がマークした13度。1976年から1980年にかけての記録がいまだに破られていないのだから、いかに長期防衛が難しいか分かるだろう。

元WBCバンタム級王者の山中慎介が具志堅の記録に迫ったのが2017年。「神の左」でKOの山を築いたが、13度目の防衛戦でルイス・ネリ(メキシコ)に敗れて陥落した。

同じ時期に日本のリングを盛り上げた元WBAスーパーフェザー級王者・内山高志は史上3位の11度防衛。4位は元WBCバンタム級王者・長谷川穂積の10度、5位がロシアから来日して協栄ジムでプロ転向した元WBCフライ級王者・勇利アルバチャコフの9度となっている。

日本の世界王者防衛回数ランキング


6位タイの元WBCスーパーフライ級王者・徳山昌守、元WBAバンタム級王者・亀田興毅と並んだ寺地は、歴代の名王者の系譜に名を連ねているのだ。

複数階級制覇が増え、相対的に価値が高まる長期防衛

近年は無理な減量を避ける意味もあり、長期防衛より複数階級制覇を目指すボクサーが多い。日本初の4階級制覇を果たした井岡一翔や、世界的に評価の高い現バンタム級王者・井上尚弥は3階級制覇を達成。昨年の大晦日に井岡に敗れた田中恒成も元3階級王者だ。

1階級上げるとパワーも体格も違うため、自分より大きな相手を倒して複数階級を制覇する方がインパクトが強く、名声も高まる。減量が厳しいという理由だけでなく、よりビッグマネーを稼ぐ意味でも階級を上げる価値はあるのだ。

ただ、時間の限られた現役生活で複数階級制覇するためには、ひとつの階級に長く留まることができない。井岡はベルトを巻いた4階級のうち、最多防衛はWBAフライ級王座の5度。井上でもWBOスーパーフライ級王座を7度防衛後に返上している。

裏を返せば、長期防衛の価値は相対的に高まっていると言えるだろう。年間2~3試合しかできないボクサーにとって加齢は大きな敵だ。たとえ20代で世界王者になっても、長く防衛するうちに30代に突入する。いくら日頃から節制しているとはいえ、トレーニングを重ねるうちに筋肉がつき、それと反比例するように代謝は悪くなるため減量は厳しさを増す。当然、徐々にスピードも落ちていく。全ての無駄を削ぎ落としてパフォーマンスを維持しながら、戦い続けなければならないのだ。

ライトフライ級は柳明佑の17度防衛が最多

25歳で世界王座に就いた寺地もすでに29歳になったが、相手に打たせないスタイルだからこそダメージの蓄積も少なく、長くリングに上がり続けることを可能にしている。公言している具志堅の日本記録超えも決して不可能ではないだろう。

ちなみに海外のリングを見渡すと、上には上がいる。防衛回数の世界記録は元ヘビー級王者ジョー・ルイスの25度。1940年代に達成した記録がいまだ破られていないのだ。さらに元WBOライトヘビー級王者ダリウス・ミハエルゾウスキー(ポーランド)の23度、日本で大橋秀行とも戦った元ミニマム級王者リカルド・ロペス(メキシコ)の22度と続く。

寺地が戦うライトフライ級の最多記録は柳明佑(韓国)の17度。1991年に大阪で行われた18度目の防衛戦で無敗の王者を止めたのが、井岡一翔の叔父・弘樹だった。

寺地が具志堅超えを果たした後は、柳明佑のライトフライ級記録がひとつの目標になるかも知れない。いずれにせよ、記憶より記録に残る男の長期防衛に期待しよう。

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