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マイク・タイソンのリング復帰で日本のカリスマの復帰気運も高まるか

マイク・タイソンⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ロイ・ジョーンズ・ジュニアとドロー

プロボクシングの元世界ヘビー級王者、マイク・タイソンが元4階級制覇王者、ロイ・ジョーンズ・ジュニアと2分8ラウンドのエキシビションマッチを行った。

かつて世界的名声を手にした両者とはいえ、タイソンは54歳、ジョーンズは51歳と高齢のためケガを心配する声や冷めた見方もあったが、終わってみると好意的な声が多い。

特にタイソンは現役時代とほぼ変わらない体重99.97キロに絞り、リング上でもアグレッシブに攻めた。とても15年ぶりとは思えないファイトで往年のファンだけでなく、現役時代を知らない若者のハートまでつかんだ。

しかも、タイソンがほぼ一方的に攻める展開でジョーンズはスタミナ切れしていたが、採点はドロー。現役時代の血気盛んなタイソンなら不満を抑え切れずに暴れたかも知れないが、年老いた元チャンプは「みんなが喜んでくれればそれでいい」と大人の対応を見せ、さらに好感度を上げた。

タイソンと三浦知良に共通する「戦う50代への畏敬」

もっとも、この一戦でタイソンが得る報酬は1000万ドル(約10億4000万円)、ジョーンズは300万ドル(約3億1200万円)と伝えられている。タイソンはその大半を寄付し、今後もリングに上がる意向を示しているが、試合前に大麻を使用したことを米紙に明かしたこともあって今後は流動的だ。

それでも、衰えを隠せずにファンを失望させた訳ではないので、今回の戦いぶりだけを考えれば、元ビッグネーム相手に次戦が組まれても驚けない。

50代の元王者にファンが求めるのは、相手をなぎ倒すパワーでも、かわすことさえできないスピードでもない。あのタイソンがリングに立っているという事実と、そこに至るまでの懸命な努力が垣間見えるからこそ、オールドファンは胸を熱くするのだ。

日本サッカー界のレジェンド、53歳の三浦知良(横浜FC)も、往年のドリブルやシュート力を望むことはできないものの、「ピッチに立っているカズを見たい」というファンは少なくない。同情されるレベルまで衰えたらユニフォームを脱ぐしかないだろうが、プロとして一定のレベルを維持していれば逆にファンに多大なる勇気と感動を与えるだろう。

40歳・長谷川穂積も刺激

元世界バンタム級王者の40歳・長谷川穂積は、テレビのスポーツニュース番組でタイソン戦の感想を聞かれ、「僕も戦えなかった階級の選手や時代の選手と拳を交えたいなと思いました。もし試合ができるようになったら想像するだけで鼻血が出そうです、嬉しくて」と刺激を受けた様子だった。

もしかしたら、今後、日本でも同じようなエキシビションマッチ実現への気運が盛り上がるかも知れない。安全性に最大限配慮するため、ラウンド数やグローブの大きさなどクリアすべき問題は多いが、「おやじファイト」という中高年ボクサーのスパーリングイベントが全国各地で実施されてきたことを考えれば不可能ではない。

テレビの企画やイベントなどでは元世界王者や元プロボクサーがリングに上がることもあるが、タイソン―ジョーンズ戦のようにファイトマネーを支払い、本格的な興行として開催した方が、本人も本気になるし、盛り上がり方も違うだろう。

いまだ「現役」辰吉丈一郎の復帰に期待

そこで期待したいのがカリスマ、辰吉丈一郎。世界バンタム級王座のベルトを3度も巻き、記憶にも記録にも残るボクサーだ。

辰吉は1999年にウィラポン・ナコンルアンプロモーションに敗れて一度は引退を宣言したが再起。2009年にタイでTKO負けしたのを最後にリングに上がっていないが、いまだに「引退」の2文字は口にせず、孤独なトレーニングを続けている。

公式の試合は不可能でも、エキシビションなら非現実的とは言い切れない。現在50歳のレジェンドを支持するファンは多く、ニーズはあるはずだ。3階級制覇した長谷川穂積やバンタム級王座を12度防衛した38歳・山中慎介との夢の対決、52歳・薬師寺保栄との再戦でも大いに盛り上がるだろう。

リングで出た結果に対して辰吉が納得すれば、正式に引退を考えるきっかけになるかも知れない。いわば、ボクサーとしての「死に場所」となる可能性もあり、そういう意味でも実現を期待したい。

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