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Bリーグ4強決定、西地区クラブのファイナル初進出が決まり新時代に突入

2022 5/19 11:00ヨシモトカズキ
比江島慎,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

持ち味を存分に発揮し、琉球と川崎は順当に勝ち進む

レギュラーシーズン最終戦で出場する8クラブが揃い、戦いの幕が上がったチャンピオンシップ(CS)。例年以上の混戦だったこともあり、クォーターファイナルも激戦となった。4カードのうち、今シーズン最高勝率を記録した琉球ゴールデンキングスは秋田ノーザンハピネッツを、川崎ブレイブサンダースは名古屋ダイヤモンドドルフィンズを2連勝で下しセミファイナルへ進出した。

琉球は秋田を60点以下に抑える理想的な展開で、オフェンスでも第2戦で#34小野寺祥太が4本の3Pシュートを含む14得点を挙げるなど、次のシリーズにつながるような試合となった。川崎は得意の攻撃力がシーズン同様に爆発。第2戦は外国籍選手が不在となった名古屋Dのスピードに手を焼いたものの、高さを生かして退けた。

昨季ファイナルの再現は宇都宮に軍配、日替わりヒーローが活躍

このシリーズ最大の注目は、昨季ファイナルの再現となった千葉ジェッツと宇都宮ブレックスの対戦。東地区は熾烈な首位争いとなり、1位の千葉から4位の宇都宮まで0.5ゲーム差。立場としては東地区首位の千葉とワイルドカードの宇都宮だったが、シーズン中の直接対決は2勝2敗と力は互角だった。

直近の試合がロースコアだったこともあり、筆者は千葉にハイスコアゲームをさせなければ宇都宮に分があると予想していたが、結果的にロースコアに持ち込んだ宇都宮が連勝した。今シーズンの平均失点が69.1の宇都宮は、70点前後に持ち込めば勝機があると見られた通り、シーズン平均得点88.1の千葉を両試合で70点に抑え込むことに成功した。

千葉の強みは確実な3Pシュートと、アグレッシブなゴールアタックから得られるフリースローの多さだったが、初戦はなかなかファウルを得られずシーズン平均20.4本だったフリースロー試投が僅か9本に。2戦目はフリースロー試投を15本に乗せたものの、3Pシュート成功率が26.1%と低迷した。

シュートの試投数自体は平均的だったが、確率の低さに加えて3Pシュートとフリースローの少なさから得点効率が悪く、思うように得点が伸びなかった。まさに宇都宮の守り勝ちと言えるだろう。

また宇都宮は日替わりヒーローが誕生したことも大きい。両試合でエースの#6比江島慎が勝負強さを見せた一方で、初戦では#11荒谷裕秀が4本の3Pシュートを全て決めて14得点し、ディフェンスでもハッスルを見せた。そして第2戦は#7テーブス海、#18鵤誠司の司令塔がともに2桁得点を挙げ、#9遠藤祐亮の勝負を決めた3Pシュートも大きかった。

シーズン前に外国籍選手が入れ替わったものの、選手層の厚さを見せつけ、昨シーズンのファイナルのリベンジを果たした。

3戦までもつれた大熱戦はCS初出場の島根が制す

唯一3戦までもつれたのは島根スサノオマジックとアルバルク東京のシリーズだ。A東京は終盤に#22ライアン・ロシター、#53アレックス・カークがケガをして厳しい戦いを強いられたが、何とか踏ん張り東地区3位に。島根は前評判通り、#3安藤誓哉、#4ニック・ケイ、#14金丸晃輔の新加入選手が活躍し西地区2位で初のCS出場を決めた。

攻撃力が武器の島根は第1戦から持ち味を発揮し、4選手が2桁得点で80点を奪い先勝。しかし第2戦はこのシリーズで戦列に戻ったカークが復調し、#11セバスチャン・サイズ、#24田中大貴の得点に加えて、ディフェンスがさえ渡り91−57で五分に戻した。

運命の第3戦は安藤が鬼気迫る活躍で島根が先行するも、後半に急成長した#8吉井裕鷹、カークで追い上げて接戦となる。勝負を分けたポイントは第3クォーターの終わり方だった。前半不調だった島根#8リード・トラビスが残り2分に初得点を挙げると、そこから3本連続で3Pシュートを決めて64−55と9点リードを得た。

追い上げたいA東京はシュートが思うように決まらず得点が伸びない。結局島根の勢いはその後も衰えることなく80−62で勝利し、セミファイナル進出を決めた。

同地区同士のセミファイナルで初めて西地区からのファイナル進出が決定

この結果、21日から始まるセミファイナルは琉球vs島根、川崎vs宇都宮となった。西地区と東地区同士の対戦となり、これで西地区から初めてファイナルに進出することが決定。これまでBリーグは東地区、特に関東のクラブが強く、ファイナルには全て関東のクラブが進出していた。そうしてBリーグの歴史が変わったことも興味深い。

それぞれの対戦に目を向けると、当然ながら両試合ともに好ゲームが期待できる。琉球と島根のシーズン成績は1勝3敗で琉球が勝ち越しをしているが、島根にはA東京に勝利した勢いがある。

島根は#2ペリン・ビュフォードや#3安藤誓哉の1対1から活路を見出していくが、過去の琉球との対戦ではそのスタイルが封じられている。また島根は失点78.3でリーグ8位だが、リーグトップクラスのディフェンスチーム・琉球に守り勝つことは難しい。クォーターファイナルで不振だった金丸と、アシスト役に回ったビュフォードの得点力が鍵を握る。

琉球は全選手が好調でどこからでも得点ができ、ハイスコアゲームでもロースコアゲームでも主導権を握ることも可能だ。加えてホームということもあり、琉球が優位か。

そして川崎と宇都宮の試合は、川崎の高さが勝敗を左右する。帰化選手の#22ニック・ファジーカスがゴール下にいることで、川崎はSFまで2mを超える布陣が可能。対して宇都宮のウイング陣はアンダーサイズのため、ミスマッチが生じやすくなる。また、川崎はSGでシューターの196cmの#23マット・ジャニングを起用できることも強みだ。こうした布陣は相手からすれば脅威になる。

しかし宇都宮は一つの穴をチーム全員で埋めることができる総合力があり、高さの面では逆に平面での強みを生かすかもしれない。クォーターファイナルで日替わりヒーローが出たことも大きく、選手層の厚さは一枚上手か。千葉に勝利した勢いもあり、シーズンのゲーム差がほぼ無いことを考えても、拮抗した試合になるだろう。

西地区からのファイナル進出が決定し、長年続いた“東高西低”の時代が終わりを告げようとしているBリーグ。新時代に突入した今シーズンの結末はいかに。

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