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【Bリーグ】弱点を強みに変えた島根はリーグ屈指の強豪になれるか?

2022 2/5 11:00ヨシモトカズキ
金丸晃輔,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

大きな課題だった攻撃力を大型補強でカバー

2021年秋に開幕した今シーズンのBリーグも折り返しを迎えたが、新型コロナウイルス変異株による感染のため試合の中止が続いている。各クラブともコンディション維持が難しく苦境ではあるが、何とか乗り切り5月のファイナルを無事迎えたいところだ。

これまでファイナルに進出したクラブはなく、“東高西低”と言われていた西地区。東西2つのカンファレンスになった昨シーズンは、琉球ゴールデンキングスがあと一歩のところで涙をのんだ。とろが今シーズンは西地区の調子が良く、琉球、島根スサノオマジック、名古屋ダイヤモンドドルフィンズの3クラブが勝率7割以上の好成績を残している。特に今回は、弱点を強みに変えた島根の好調ぶりを挙げたい。

今シーズンオフに話題をさらった島根。理由は、昨シーズンのMVPであり、リーグ屈指のシューター#14金丸晃輔がシーホース三河から、2019年ワールドカップに出場した司令塔#3安藤誓哉がアルバルク東京から、それぞれ移籍してきたからだ。

元々島根はBリーグ初年度に51勝9敗と圧倒的な成績でB1昇格を果たしたのだが、翌シーズンは僅か11勝しかできず再降格。B2で好成績を残しB1に再昇格するも、2019−20シーズンはコロナ渦の影響で全試合が途中中止となり、11勝30敗の結果に終わった。

B2で無双するもB1で思うように勝てない状態が続いた島根だったが、2019年のシーズン直前にバンダイナムコゲームスが親会社になったことで選手補強に力を注げるようになった。2020−21シーズンは多くの選手が入れ替わり、序盤こそ苦戦したものの終盤は8連勝し、結果28勝32敗と勝率5割まであと一歩のところだった。

そして勝負を目論んだ今シーズン、結果を残した外国籍選手が残留し、金丸と安藤の2名が加わった。さらに攻撃的な戦術を得意とするポール・ヘナレヘッドコーチ(HC)が就任したことも追い風になった。

戦術が合致し、リーグ有数の攻撃的なクラブに

ここまで島根が苦戦をしてきた原因が得点力不足であることは明白で、初のB1となった2017−18シーズンは70.9で最下位、2019−20シーズンは71.3で16位と大きなブレーキになった。特に日本人選手の得点力の低さは深刻で、いずれのシーズンも得点の割合が8割前後の外国籍選手に頼らざるを得ない状況だった。

その中で金丸、安藤、ヘナレHCに白羽の矢を立てたのはごく自然のことだが、他クラブとの競争を打ち勝ったのは、先を見据えた可能性の高さが伺える。迎えた千葉ジェッツとの開幕戦では金丸が11得点、安藤が24得点でいきなり白星を挙げると、その後も順調に勝利を重ね22勝8敗と勝率は7割を超えた。

特筆すべきはやはり得点力の改善だろう。一昨シーズンが71.3、昨シーズンは78.2で、今シーズンは88.4とリーグ3位になるまで改善された。得点源として期待された金丸は11.9得点とやや苦戦しているものの、安藤がキャリアハイの15.5得点を記録。さらには走力のある#7ペリン・ビュフォード、#8リード・トラビスはヘナレHCが目指すスタイルにマッチし、昨シーズン以上の活躍を見せている。

チーム全体では3Pシュートの成功数が平均4本増え、35%を超える高確率。司令塔として安藤が安定したゲームメイクを見せていることで、ターンオーバーの数も格段に改善された。得点、3Pシュート成功数と成功率、ターンオーバー以外の数字はそこまでの変化はないが、これらの大幅な改善がチームを一変させた。平均2桁得点を挙げている金丸、安藤の活躍で総得点に対する外国籍選手の比率は56%まで減少している。

また特徴的なのはシュート分布で、69.2本のFG試投数に対して、3Pシュートが30本で、ペイントエリアが30.1本。ミドルレンジからのシュートはほとんどなく、あまり効率的ではないために年々数が少なくなっているNBA同様、今シーズンの島根のスタイルは現代バスケットの典型とも言える。

緊急時に備え、全選手に攻撃の意識が必要

当然ながら課題はある。確かに外国籍選手の得点比率は下がったが、金丸と安藤に次ぐ日本人選手の得点源がおらず、#13阿部諒の5得点が日本人選手3位の数字だ。今後金丸と安藤がケガで欠場となれば、これまでのような苦しい攻撃に戻ってしまうことが予想され、#1後藤翔平や#15白濱僚祐などディフェンダーたちも得点での奮起が求められる。

さらに島根の外国籍選手は機動力と器用さはあるが、若干のアンダーサイズで肉弾戦は不得手。リバウンド数はリーグ上位なだけに、フィジカルの強い相手に対しディフェンスがどこまで通用するかは不明。ただしここまでアルバルク東京、宇都宮ブレックスなど東の強豪にも勝利しており、その実力は本物だろう。

あとは主力にケガなく戦い抜くことができれば、西地区のトップに立つことも考えられる。ダークホースから強豪へ−−。島根の真価が問われるのはこれからだ。

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