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カブス鈴木誠也、日本人5人目の新人王へ「和製トラウト」と評される理由

2022 4/19 06:00田村崇仁
カブスの鈴木誠也,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

5年契約100億円超、デビュー8戦連続安打

米大リーグ、カブスに今季加入した27歳の鈴木誠也外野手が開幕から地元ファンも絶賛するロケットスタートを切った。プロ野球広島からポスティングシステムを利用し、5年契約総額8500万ドル(約106億円)は日本から移籍時の野手で最高額の大型契約。広島時代に打率3割、25本塁打以上を6年連続でマークした日本を代表するスラッガーの実力を存分に発揮している。

4月7日の開幕戦は「6番・右翼」でメジャーデビューし、サイ・ヤング賞右腕バーンズから第2打席で左前打を放つなど2打数1安打、2四球と絶好の滑り出し。2試合目で右犠飛による初打点を記録し、3試合目には「5番・右翼」でフル出場して1回にメジャー初本塁打となる先制の1号3ランを放つなど、3打数1安打3打点と大活躍した。

さらに4月12日のパイレーツ戦に「5番・右翼」でフル出場し、5回に2試合連続の2号ソロ、7回に2打席連続の3号ソロ本塁打を放って度肝を抜いた。4月18日のロッキーズ戦では「5番・右翼」で先発出場し、7回の第4打席で5試合ぶりの4号本塁打。右方向に放った一発に敵地も大歓声に包まれた。

打率を4割に乗せ、日本人選手では2008年に岩村明憲が記録した9試合連続に次ぐデビューから8試合連続安打。2003年の松井秀喜(ヤンキース)の7戦連続を抜いた形だ。

新人王候補の断トツ1位、MVPの声も

そんな日本人スラッガーの活躍が現地を賑わせる中、米スポーツチャンネル『Fox Sports』は「ナショナル・リーグ新人王のオッズ」を紹介。注目の大型ルーキーたちの中で、鈴木は3.25倍で早くも断トツの1位となっている。

日本選手で新人王となれば、2018年にエンゼルスで投打の「二刀流」に挑んだ大谷翔平がア・リーグの最優秀新人(新人王)に選出されて以来、5人目の快挙。歴代の日本選手では1995年の野茂英雄投手(ドジャース)、2000年の佐々木主浩投手、2001年のイチロー外野手(以上マリナーズ)とそうそうたるメンバーが並び、前回の大谷はイチロー以来、17年ぶり4人目の快挙だった。

米メディアでは圧巻のスタートダッシュに「MVP候補」の声も出ている。

「和製トラウト」のパワー健在、野球IQも定評

鈴木はメジャー現役最強クラスの選手、マイク・トラウト外野手(エンゼルス)の日本版とも評される。パワフルな投手のストレートに振り負けず、鋭く曲がる変化球にも対応し、ボール球には手を出さない選球眼が光っている。

メジャー初アーチは左中間に美しい放物線を描き、大リーグでも通用する豪快なパワーを証明。第2号は逆方向にも力負けしない右中間への一発だった。入団会見では背番号を27にした理由を聞かれ、憧れのトラウトと同じ番号にしたと答えており「マイク・トラウト、アイラブユー」と会見場を笑わせた場面もあった。

今季はロックアウトが長期化し、鈴木にとっては使用球やストライクゾーンなど取り巻く環境はがらりと変わった。それでも頭も体もフル回転し、限られた調整期間でアジャストに成功したのは適応力の高さと定評があった「野球IQ」の高さも評価されている。

オープン戦から「ノーステップ打法」を試すなど打撃スタイルも微修正しながらメジャー流に対応している創意工夫が光る。金メダルを獲得した東京五輪では日本代表の4番に座ったが、打撃スタイルにもともと穴がなく、パワーと確実性はメジャー級だ。

鈴木は東京・二松学舎大付高から2013年にドラフト2位で広島入り。シーズンでは首位打者と最高出塁率のタイトルに輝いた。プロ通算は902試合出場で打率3割1分5厘、182本塁打、562打点。中でもパワーが目を引きがちだが、出塁率の高さは大きな武器。それを支えているのが「選球眼」の良さでもある。

メジャー第1打席でも追い込まれながら、きわどいボール手を出さず、四球をもぎ取った。そんな「選球眼」がまさに「神ってる」活躍を序盤から引き出している。

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